ユニークフェイス講演企画

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2010年8月24日火曜日

で、何でそんな僕が相談を受けるのか?

ここまでを読むと、「なんだ、介護職じゃん。相談なんか受けられるの?」と疑問に思った方もいるかも知れませんね。

そうです。僕の仕事は基本的に介護職です。
でも、それだけではありません。

これは、機会がある度に僕が話す事ですが、障害を持つ子を持った親御さんの苦悩というのは、これはもう想像を絶するものがあります。ユニークフェイスな方を子に持つ親御さんもこれは同じだと思います。

僕が働いている施設は、基本的に大人の方が通われる施設で(15歳以上の方を対象)、現在利用者さん全員が成人しています。

つまり、親御さんは最低でも20年間障害を持つ子と付き合ってきたのです。
その中で、親御さんが考えられてきた事、繰り返し繰り返し考えてきた事。そして、それでも答えは出ない事。
そういう思いを抱えた親御さんとの付き合いも、この仕事の一部です。

たとえば、僕のグループの利用者さんは全員車椅子に乗っている身体障害者です。知的障害も併せ持っています。

でも、みなさん普通におしゃれな格好をしてきています。可能な限り、おしゃれをします。
決して安易にジャージを着せられて登所してきたりなんかしません。
今の季節(夏)なら、ポロシャツにデニムの短パンなんかを着てきます。

親御さんだって、ジャージにした方が、脱ぎ着も楽だし、洗濯も楽。障害を持っているためか、体が発達不全を起こしている方も多いので、成人しても身長は150cm未満の方が多く、また体の変形があるため、サイズの合うおしゃれな服を見つけ出すのだって一苦労なのです。

ある利用者さんは、一年を通して、ラルフローレンのKIDSサイズの150とかを着ていらっしゃいます。
そこまでしてでも、息子、娘に普通の人と同じようにおしゃれな服装をさせてやりたい。

その、親御さんたちの気持を、受け止めるのも無視してしまうのも、職員の考え方次第です。

そんなおしゃれな利用者さんを受け入れる職員が、みんなジャージだったらどうなるでしょう?
ぶち壊しです。

せっかくおしゃれをして買い物に出かけるつもりだったのに、引率する職員がジャージだったら…、これは全くナンセンスな話です。

だから、うちの施設では職員は基本的にジャージ禁止です。

そういう形式的な事でも、こちらが理解して対応しているのとそうでないのとでは、ご家族との関係も全く違ってきます。

ある利用者さんは、呼吸状態が悪化し、栄養状態にも問題を抱えて、大手術を立て続けに受けられました。
でも、おかげで体調がずいぶん良くなりました。
その利用者さんのお母様とはよく話をしていました。それなりに関係が出来ていたのですね。

で、ある日、そのお母様が僕に言いました。「この子と行ってみたいところがあるんだけれど、それで体調が悪くなったらって考えたら怖くって、なかなか踏み切れない」

僕は答えました。「お母さん。今の彼の体調は、僕が彼を見るようになったこの4年間の中で、最高に安定しています。お母さんが彼とやりたい事があるなら、やらなきゃ損です。だって、いつまでこの調子が続くかだって分からないじゃないですか」

お母様は言いました。「そうよねえ。もしかしたら、今が一番良くて、これから徐々に体力も状態も落ちていくのかも知れないわよね…」

僕はさらに言いました。「お母さんは、今まで彼と一緒に考えて、一緒に何が楽しいか、何が幸せかって生きてきたんですから、これからだってそうやっていけば良いんですよ。彼だって、お母さんが一緒に行きたいところがあるんだったら、絶対行きたいと思ってますよ。それで彼が多少体調が悪くなっても、僕たちは体調が悪いなりに活動の内容を抑えて、負荷がかからないように日中活動を調整します。それが僕たちの仕事ですから」

するとお母様は「うん。分かった。やっぱりあとで後悔はしたくないもんね。今体調がいいのは明らかなんだから。精一杯楽しませてあげないと」
と言って帰って行きました。

そのあとしばらくして、そのお母様は、息子と一緒に、考えていた通りのプランでちょっとしたお出かけをして、晴れやかな顔をして報告に来てくれました。
「やっぱり行って良かったー。本人もすごく喜んでたみたい。もっと早くいけば良かったかなー?」

僕は言いました。「いや、お母さん。今がちょうど良かったんですよ。御家族が調子が良いって思ってて、施設の職員も調子が良いって思っていて、お医者様にも止められないっていうタイミングが今だったでしょう?だから、ちょうど良かったんですよ!」

「そうねえ。この先どれくらい調子がいい状態で行ってくれるか分からないけど、とりあえず今は幸せだわあ」

この話の中の僕は、施設職員としては言ってはいけないような事までべらべらしゃべってしまっています。たとえば、彼と、お母様が、いかに深く結びついた人生を送ってきたか、という事を勝手に指摘して、お母様を後押ししています。
これで何かあったら、大問題です。

でも、僕はそのお母様とは信頼関係が「できている」と判断したので、あえて背中を押す役割をしました。きっとこの人は、背中をそっと押してくれる人を探している。

介護職でも、そういう場面には出会うのです。だからこそ、僕は今の仕事を続けていられるとも言えると思います。

本当に介護しかしない仕事だったら(そんな仕事は実際にはないと思うけれど)続いていません。

僕は正直、自分が「カウンセラー」になる事は難しいと思っています。
でも、誰かの相談に乗って、もしかしたら誰かの助けになる事は出来るかも知れない、と考えています。だから僕はここで、血管腫の方の相談を受けてみよう、と思い立ったのです。

まあでも、そうそう簡単には相談できないよねって事も分かっているのですが。